■千春のお話

Part209 無念からの脱出を目指す

12/31 さっきまでここにいたきのっぴくんが、私の心の中へ引っ越したなんて、とても信じられない。
車の雪おろしをしてから、ゲレンデに。
お父さんお母さんが志鷹に泊まりに来てくれることになっていた。
ここで合流して、楽しい夕食と、朝ご飯のお節を食べて3人でお家に帰ることになっていた。

きのっぴくんが病院へ着いたとき、所持品は胸ポケットの志鷹の領収書だけだったそう。
しかもクリスマス連休に泊まってくれたときの先週の領収書。
なぜか、領収書がウェアーのポケットに入っていた。
それで、病院から志鷹に電話がかかってきた。
それでも、全く信じられない私は、逆ギレして、間違いです、と一度電話を切ってしまった。
すぐにまた電話が来て、落ち着いて聞いてください、電話を切らないで、と言われてしまった。
きのっぴくんのウェアーのズボンは、明るい蛍光系のきみどりだった。
看護婦さんに聞くとその通りだった。

それでも、信じられない私はきのっぴくんの携帯に電話した。
パトロールの人が出た。
今の事故の方の物ですとおっしゃった。

最後に話したのは私だっただろうか?
彼がお父さん達を駅まで迎えに行こうかと悩んでいたとき、向かえに行ってあげた方が良いよと強く勧めたなら、きのっぴくんはパノラマまで登らなかったかもしれない。

書いているとき、永野さん(お客さま)がフロントにお越しになった。
心の苦しさをお話しした。
そうしたら、人の亡くなる日は決まっていること。
人生を達成したとき、亡くなるようになっているんだってこと、教えてくださった。
私が悔やんでいたりしたら、きのっぴくんは浮かばれないんだって。
きのっぴくんをふんわりと天国に浮かばせてあげないといけないから、悔やまないように切り替えたい。
でも、なかなか切り替えられない私がいる。
きのっぴくん、頑張るから。
もうちょっとだから。

書き終わって、にっこり笑うきのっぴくんが見えたような気がした。
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